日本で8月といえば、照りつける日差しと、まとわりつくような暑さのただ中にあります。
冷たい飲み物を求め、コーヒーにも氷を浮かべたくなる季節。
ところが、赤道付近に位置するケニアでは、標高の高い地域を中心に、6月から8月にかけて気温の低い時期を迎えます。
今回のコーヒーがつくられたニエリも、そうした高地のひとつです。
赤道直下と聞けば、一年を通して強い日差しが照りつける土地を想像しますが、ニエリでは7-8月に一年で最も気温が低くなります。
朝晩は12℃前後まで冷え、日中でも20℃に届かない日があるなど、日本で抱く、太陽が照りつける動物王国のような印象とはずいぶん異なる気候です。
8月もまだ涼しい季節のなかにありますが、7月に迎えた寒さの底を越え、気温は少しずつ上向いていきます。
日本人が真夏の空の下でアイスコーヒーを飲む頃、ニエリでは冷涼な空気のなかに、次の季節の兆しが現れ始める。
同じ8月でありながら、二つの土地では、季節がまるで異なる方向へ進んでいるのです。
今回のカンゴチョファクトリーは、ケニア中部、ニエリに位置するコーヒーの加工所です。
周辺の小規模農家が収穫したコーヒーチェリーを受け入れ、果肉の除去、発酵、水洗、乾燥といった工程を経て、輸出できる生豆の状態へと仕上げています。
今回のロットは、粒の大きな豆を選別したAA規格。
精製方法はウォッシュトです。
焙煎は、この豆が持つ酸味の輪郭を生かすため、浅煎りに仕上げました。
口に含むと、まず感じられるのは、輪郭のはっきりとしたシャープな酸味です。
細く引かれた一本の線のように舌の上を走り、その後ろから、キャラメルを思わせる柔らかな甘さがほんのりと現れます。
鋭い酸味を持ちながら、それだけで終わる味ではありません。
甘さがその角をわずかに包み込み、飲み進めるほどに、尖りの奥から穏やかな表情が見えてきます。
それは、最も寒い7月を越えた、ニエリの8月にも少し似ています。
冷涼な空気はまだ残っている。
けれど、その向こうでは、次の季節へ向かう温かさが、少しずつ姿を現し始めている。
シャープな酸味と、その奥にあるキャラメルのような甘さ。
遠く離れたニエリの8月を思い浮かべながら、味わっていただきたい一杯です。






